4.282011
第5回事業創出サロン【テーマ:治療と診断】
テーラーメイド医療が普及するなか、治療薬と診断薬が切っても切り離せなくなってきました。治療方法を決定するための診断薬の開発を基軸としたビジネス戦略が重要性を増しています。これを「セラノスティクス(Theranostics = Therapeutics + Diagnostics、治療+診断)」と呼びますが、製薬企業の開発の現場でもこのセラノティクスが注目を浴びてきました。そこで今回は、この「セラノスティクス」を話題として取り上げ、効率的な創薬、そして診断薬、バイオマーカーの開発について、この分野での勉強会を主宰している産総研 三宅先生に話題を提供していただきました。
開催日時 | 平成23年4月28日(木) 13:00~15:00 |
開催場所 | 京都リサーチパーク 東地区1号館2階 サイエンスセンタークラブ |
講演者 | 三宅 正人氏 (産総研イノベーション推進本部 連携主幹 ) |
テーマ | セラノスティクス(治療+診断)基盤技術の開発-放射能等の環境要因の定量的把握に向けて |
講師ご略歴
1990-1994年、通産省工業技術院研究員。1994-2001年、同主任研究員
2001-2004年、産業技術総合研究所ティッシュエンジニアリング研究センター
2005-2010年、同セルエンジニアリング研究部門
2010年、同バイオメディカル研究部門・細胞情報工学連携研究体長を経て、2011年4月より現職
1999-2001年、国際ヒューマンフロンティアサイエンス財団フェローとして米国スクリプス研究所に留学
2003年、フランス・ルイパスツール大学客員教授
2004年12月、(株)サイトパスファインダーを設立、同取締役を兼任
2006年から1年間、ベンチャーへ休職出向、ベンチャー事業の開拓に専念
2007年に産総研復職。
講演内容
放射能を含め、環境から受ける影響は国民一人一人が懸念するところとなっている。しかしながら、政府、マスコミから発信される情報は一般論であり個人のリスクの参考にすぎない。他方、スマートフォン等の普及に伴い社会的には個人の情報は個人で管理する動きがみられる。大衆心理に基づく混乱を避け、安心して健康に暮らせる社会基盤の構築が求められるが、個人の健康リスクを個人が把握するための技術は未開拓な部分が大きい。
健康リスクは遺伝的背景と環境的背景に影響を受けると理解されている。遺伝的背景は核酸マイクロアレイや次世代シークエンサー等の技術革新の結果、把握するための技術が整備されつつある。一方、環境的背景については複雑であり、定量的把握が困難であった。
近年、腸内細菌フローラ、血中自己免疫、体液マイクロRNA等と環境や疾患の関わりについて、知識が爆発的に増え、理解が急速に進んでいる。こういった新しい知識を活用するための計測デバイスの開発や解析技術の開発を進めることで、環境的背景の把握が確実に可能になると考えられる。
「セラノスティクス」は治療方法を決定するための診断薬の開発を基軸としたビジネス戦略を意味する造語であるが、その範囲にとどまらず、個人で健康リスクを管理できる社会基盤構築のためのビジネス戦略と理解し、新しいバイオ市場の機会になるようすべきと考えている。