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第1回kizki Salon 「ドローン・オートフライト・デベロップメントの今」

kizki Report

第1回 kizki Salon

「ドローン・オートフライト・デベロップメントの今」


2016年11月24日、京都リサーチパークにて第1回 kizki Salon「ドローン・オートフライト・デベロップメントの今」が開催されました。ドローン関連のスタートアップなど産業展開の可能性が高まっている中、幅広い業種の方々計42名が参加されました。会場は、今年5月にオープンした「KRP BIZ NEXT」。とても落ち着いた雰囲気のビジネスサロンを貸切にして、熱のこもった3時間のイベントが行われました。

 

まずは、株式会社カエルグラス 代表取締役社長の西村大地氏による、7月29日開催の「第4回kizki PITCH&ドローンGO!NEXT!」の振り返りからプログラムがスタート。西村社長がドローンの活用状況や課題を紹介されました。

 

続いてオートデスク株式会社 サブジェクトマターエキスパートの加瀬 秀雄氏、同 技術マネジャーの門口 洋一郎氏が同社の3D CG技術ソフトウェア「Maya」を活用したドローンの航行制御の取組みについての講演です。建築などの設計現場で使われる3D CADのプロバイダーとして知られるオートデスク。エンターテイメント作品用の3D CGソフトウェアも提供しており、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を始め、VFXを駆使した様々な映像作品の現場で使われています。最新の3D CG技術紹介では、浜辺に打ち寄せる波や人の表情を忠実に再現した画像の本物と見間違う精巧さに、一同息を飲んでいました。

同社の3D CGソフトウェアMayaを活用したロボット制御の事例紹介では、ロボットの全ての駆動軸に取り付けたセンサをMayaに同期させることで仮想空間上に現実の3次元空間を再構成。Maya上のロボットを動かすと、実際のロボットもその動きを忠実に再現します。Mayaのアニメーション機能とロボットの全軸制御を組み合わせることで、滑らかな動作に加えて、撮影まで実現してしまう自動制御プログラムのデモ動画が紹介されました。そして今回は、その技術をドローンへ応用したデモを会場で実施。Maya上の動きに合わせてドローンが会場内で同じ動きを再現しました。またリアルタイム3D空間把握機能を活用して手の動きでドローンの制御を行う、リモコン不要の自動制御技術も実演いただきました。

2人目の講演者は、自治医科大学 地域医療学センター 地域医療情報学部門 講師の藍原 雅一氏でした。自治医科大学は、47都道府県の出資によって設立された、過疎化が進む地域などの医療現場の担い手を育成する学校です。卒業生は、大学卒業後2、3年で、各地域のプロとなることが期待されています。彼らの課題は、経験不足と人手不足。急な夜間診療では、大学病院に電話相談することもできず、一人で迅速に判断しなければなりません。そのような状況をAIで支援する「ホワイトジャック」というシステムが紹介されました。ホワイトジャックは過去の受信データを取りまとめ、AIが導き出した各種検査数値からの変移によって疾病を特定し、処方情報などを提示。手塚治虫の「ブラックジャック」に負けない性格な診断・処置を支援します。ここで鍵となるのがシームレスな情報の蓄積。今までつながっていなかった病院ごとの治療記録を一つのデータベースで繋いでいく事が重要だと強調されました。

シームレスな情報という点では、ドローンの航行制御も同じです。ドローンを用いることで、診療所に詰めていながら薬を患者へ届けられる。しかし、届けるためには患者の元まで、迷わずに正しい経路で到着する必要があります。GPSよりも細かい3m四方のグリッドで、グリッドの中心点をシームレスに結ぶような自動運行プログラムの実証実験が行われているとのことです。実験での課題はデータ通信の問題と環境変化への対応。前者は画像情報を飛ばす周波数帯の問題があり、実証実験で使われている5.8GHz帯は免許が必要とのことです。回避方法として携帯電波を利用するということも考えられていますが、電波法・航空法などの法規制をクリアする必要があるとのことです。また意外だったのが、後者でのカラスによる攻撃。特に黒色の期待は狙われやすいらしく、カラスの攻撃に対する回避行動や攻撃を受けた後の姿勢回復なども必要になるとのことでした。

休憩をはさんで、カエルグラス 西村社長によるドローン・オートパイロット・デベロップメント・アソシエーション(略称DADA)発足の宣言が行われました。この協議会では、産業用ドローンの開発に必要なハード・ソフト開発やそのための人材育成、実証実験場の整備等、ドローンの普及促進に向けた活動を実施していくとのことです。活動計画と合わせて、発足時の理事の紹介などが行われました。来年春の立上げを目指されます。

 

本日3人目の講演者は、ドローンジャパン株式会社 代表取締役会長の春原 久徳氏。ドローン関連のセミナーを年70件以上行われている国内でのドローン開発の第一人者です。今回は、ドローンで用いられる各種技術とその動向、そして開発ニーズを紹介されました。まずはドローンの技術フレームワーク。フライトコントローラー、コンパニオンコンピューター、アプリケーション、取得データ(クラウド化)の4つの組み合わせで、ユーザーに対してサービスを提供するというフレームワークであり、参入したい各企業は、どの部分で貢献したいのかを考える必要があります。特に大きな課題となっているのが、機体の取得データをクラウドへ送信する技術です。ここがクリアされると、遠隔操作などが実現できます。また各種制御のプログラミングは現在、DJIとオープンソースのDronecodeで二分されているとのこと。2つの陣営の裏話など、変遷などを辿りながら動向を紹介いただきました。特にプログラミングの技術的な課題として、ソースコードの情報開示の問題や、撮影画像と地図のポジション同期、高度情報の把握・管理、ハッキング対策などがあることが紹介されました。現在主流のGPS情報以外で、位置情報を把握するシステムが開発できるかどうかということも課題です。他の手段で位置を特定できれば、陸上や、水上、水中など、空以外の活用フィールドが広がります。そして日本特有の問題として、「ロボット=二足歩行」のイメージがあり、「ロボット=移動体」としての認識が広がれば、より自由なドローンの活用方法が生まれてくるという示唆がありました。

講演では、ドローンジャパンによるドローン開発の人材育成塾の状況も紹介されました。現在、第1期が終了し、様々な成果が生まれてきているとのことです。そしてドローンジャパンが展開している農業分野でのドローンの様子が紹介されたあと、最後にドローン開発を目指す方々へのアドバイスとして、次の3点を挙げられました。いかに精密に、かつ大量に、かつ安くデータを収集できるか。ドローンシステムのどの部分の開発を行なおうとするのか。そして現象の把握ではなく、ユーザーに届けるサービスをいかにイメージできるか。これらを考慮しながら、日本発のドローン技術を広めていきましょう、という最後の締めで、あっという間の3時間が閉会しました。

 

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