5.172011
アジアの病院ビジネスを巡る熱い戦い
パークウェイ・ホールディングズというアジア有数の病院グループがある。
パークウェイは、シンガポール3 病院、マレーシア11 病院、ブルネイ、インド、中国にそれぞれ1病院ずつ、全3,400 床の病院グループである。大手ファンドTPG は2005 年に同社に投資、23.9%を保有する大株主であったが、その保有株式をインド病院大手フォーティス・ヘルスケアに2010 年3 月、約600 億円で売却した。同社は2008 年に第一三共が約2,000 億円で買収した後発医薬品メーカーであるランバクシーのオーナーであったシン家が設立した病院グループで、ランバクシー売却益を元手に病院ビジネスを急速に拡大している。つまり日本の資金が同社の病院ビジネス急拡大の資金源となったのである。
フォーティスの目論見では、パークウェイとフォーティスが統合されれば、68 病院、売り上げ規模で1,000 億円のアジア有数の病院グループが誕生する。
フォーティスはこのグループを支配するつもりであった。しかし、ここに伏兵がいた。マレーシアの政府ファンド(SWF)は、パークウェイ株式23.3%を保有する2 番目の株主だった。このマレーシア政府ファンドが、なんとパークウェイ株式の過半数を保有しようとTOB をかけた。これに対し、フォーティスは買収合戦に応じ、過半数といわず全株を買収するという策に出た。
この段階で当初の見込みに比べ必要資金は跳ね上がった。過半数の取得が全株になり、かつ株価も上昇したのだ。
しかし、マレーシア政府ファンドはさらに高値攻勢に出た。結局、インドのフォーティスは政府ファンドには勝てないと買収をあきらめ、保有するパークウェイ株式を売却した。ちなみに売却益は約80 億円だったと推定されている。シン家はアジアをまたぐ病院グループの夢はたった半年であきらめざるを得なかったが、しっかり利益を上げたのである。
日本とアジア、病院ビジネスを取り巻く環境も大きく異なる。日本以外ではこれがグローバルスタンダードになっていく。良し悪しは別にして、医療の世界もガラパゴスなのかもしれない。
2010 年12 月14 日