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BGV活動紹介「シリコンバレー・イスラエルにおけるスタートアップの動向」レポート

BGV活動紹介「シリコンバレー・イスラエルにおけるスタートアップの動向」レポート

BGVはシリコンバレーやイスラエル、インド、フランスに拠点をもつシード・アーリーVCです。BGVは海外の優れた案件を発掘し、シリコンバレーのエコシステムに入れ込むことを得意とし、またB2Bに特化しています。

BGV活動紹介「シリコンバレー・イスラエルにおけるスタートアップの動向」

BGVは10月28日(水)、ICTやバイオテクノロジー、エレクトロニクス、機械、イノベーションの分野で480を超えるテナント企業や機関を受け入れる日本のベンチャーアクセラレーターである京都リサーチパーク(KRP)とともに、対話形式のウェビナーを開催しました。100人以上が参加し、定員を超えた申込者はYouTubeを介して聴講する中、BGVの創設者兼ゼネラルパートナーであるEric BenhamouとGPのEric Buatoisは同社の Enterprise 4.0 の投資テーマについて説明し、投資先の数社を紹介しました。プレゼンテーションでは、企業の投資見通しにおける主要なトレンドラインを実証するための市場指標を示しながらEnterprise 4.0のスタートアップの成功について詳細に説明し、BGVの国境を越えた投資戦略に焦点を当てました。 このイベントでは、BGVの投資先企業であるScalefast、Secret Double Octopus、およびDrishtiによるプレゼンテーションも行われました。

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BGVの創設者であるEric BenhamouがCOVID-19の影響とEnterprise 4.0の機会について語る

 

Eric Benhamou氏によると、COVID-19は企業の自動化を加速させ、デジタルトランスフォーメーション (DX) 化の速度を速めました。2020年のより興味深い進展の中、企業は分散した労働力によって支えられた遠隔の職場への移行に成功しました。「在宅勤務」への移行は、企業がそれぞれの業界で安定して競争力を維持できるようにするため、ごく短い時間で実施されました。その結果、企業はこの移行の実施にあたり、様々なSaaSベースのソリューションを取り入れることを余儀なくされました。デジタルコラボレーションとリモートワークツールへの依存により、年初以来、主にSaaS企業で構成されるBVP Nasdaq Emerging Cloud indexの株価はほぼ400%の増加となりました。

 

消費者側では、顧客たちは一歩踏み出し、オンラインショッピングやeコマースを習慣とすることを学んできました。食品や食品雑貨から家庭・事務用品、あるいは特殊医薬品やニッチな製品にまで及ぶ無数の商品やサービスと相まって、迅速で手頃な価格の信頼性の高い配達の利便性が市場で証明されています。アマゾンやディズニーのような主要なプレーヤーは、WFH(Work from Home)のライフスタイルに合わせて、ビジネスモデル全体における焦点をシフトしています。「消費のしやすさ」と組み合わせられた迅速で手頃な購入は、オンライン小売業界にビジネスを導き、顧客がオンラインプロバイダーに求め期待する基準を定める根本的な動機となっています。

 

COVID-19がすべての産業分野に与えた影響は、BGVに投資の好機をもたらしました。競合するファンドは、下流のレイトステージの企業に着目し投資するようシフトしていますが、これによってより低いバリュエーションでより魅力的なアーリーステージの企業に投資できるようになります。BGVは、この機会を狙って投資を行うにあたり、戦略的にも資金的にも十分なポジションに位置しています。

 

過去5四半期では、アーリーステージの企業に対する投資数と資金調達額が減少しました。 この減少は魅力的なEnterprise4.0企業への投資機会を増やしました。参考までに、Enterprise 4.0とは、人工知能(AI)やインテリジェントオートメーション(IA)及びデータへの独自のアクセスを組み合わせて、企業に実用的な洞察を提供するクラウドネイティブのスタートアップの新しい波を指します。これらのスタートアップは、顧客に即座にROI(Return on Investment)に影響を与える垂直的なフルスタック・ソリューションを提供しています。BGVはこの基準のもと、以下の7つの投資テーマを想定しています。

 

  1. 顧客体験を再定義する顧客中心のSaaSソリューション
  2. アプリケーションを再設計するために音声、コンピュータービジョン、ロボット工学を取り入れた組込AI
  3. 0を活用したコンピューティングとストレージのパワーを提供する新しいアーキテクチャ
  4. サイバーセキュリティを自動化と分析にシフトさせ、熟練労働者とエンドユーザーの「使いやすさ」に対処するクラウドネイティブセキュリティのイノベーション
  5. 自動化への推進から最も重大な混乱に直面している製造、自動車、ロジスティクス、およびその他の分野における従来からの市場の改善
  6. 垂直市場(食品加工など)で人々の生産性を高めるロボット工学
  7. 先述したようにeコマースとロジスティクスの競争の場を平準化する技術的な機会を作成するアマゾン効果

 

BGVのゼネラルパートナー・Eric Buatois がグローバルベンチャーの視点を提示:スナップショット

 

一見したところ、米国のベンチャー投資は、特にクラウドの技術においては引き続き堅調であり、2019年の水準を上回ると予想されています。しかし、投資はレイトステージの企業とその投資ラウンドに偏っています。初回調達の投資件数は記録的な低水準(レイトステージの取引件数と比較してわずか23.7%)となっている中、2020年も過去最低の取引評価額を記録するペースで推移しており、ミドルおよびレイトステージの投資と比較するとVC投資のわずか5.5%にとどまります。一方、このアーリーステージに特化する投資家が少なくなったという事実により、シード・アーリーかつB2Bに特化しているBGVのポジションは強化され、より魅力的なディールフローが生み出され、アーリーステージ投資における交渉が優位になっています。

 

 

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)は引き続きVCの安定したパートナーであり、CVCを含む取引は総取引の47.4%から52%近くまで上昇すると予想されています。この活動の増加と注目の大部分はクラウド技術への資本投資に集中しており、さらにこれらは大規模なレイトステージの企業に向けられているため、株式公開も増えています。

BGVの投資先企業であるGrid Dynamicsはその好例を示しています。小売、金融、テクノロジー分野向けのクラウドソリューションを専門とするITサービスプロバイダーである同社は、2020年3月にSPAC(特別買収目的会社)を通じてIPOを行いました。SPACは近年急増している新しいEXIT手法です。SPACにより世界的な危機の最中にもかかわらず、Grid Dynamicsは従来のルートを採用した場合の予想より2年も早く公開されたのです。これは、BGVの投資戦略が主要な成長分野における付加価値の高いソリューションに焦点を当てていることと、逆風に直面しているにもかかわらず下流との関係を活用するパートナーの能力の高さを示しています。Grid Dynamicsは、不確実で不安定な状況の中で目覚ましい前進を遂げ、成功を収めた数多くのBGVの投資するスタートアップの一例です。

 

BGVの独自の投資アプローチは、これまでも、そして今後も魅力的なリターンを提供するクロスボーダー戦略を採用しています。BGVは幅広いグローバルな経験と競争力のあるグローバル企業の構築方法を熟知しており、国外のチームに対してハンズオンのアプローチを取り、分散型の運用を母国に残しながら、シリコンバレーにハブを設立することを支援しています。イスラエル、インド、フランス等で設立された企業を母国に開発チーム等を残しながらもシリコンバレー のエコシステムで育成し企業価値を上げることを得意としています。統計によれば、クロスボーダー企業は、競合他社と比較して、2.1倍の売上を上げています。さらにクロスボーダーM&Aの投資額に対する平均売却額は、国内型企業の平均3.7倍に対して約5.6倍と高くなっており、また、IPOに成功した企業の場合、クロスボーダー企業への投資リターンは、市場平均の5.5倍に対して6.4倍と高い数字となっています。

 

BGVは国境を越えたグローバル企業を構築し、その規模を拡大して成果を上げるために、成功のためのハイレベルな戦略(Playbook)を作成しました。これには、企業文化の確立から、グローバルなマインドセットの構築、競争優位な明確な領域へのフォーカスまで網羅されています。この戦略については、後日のブログ記事で詳しく説明します。

 

BGVの投資先企業の講演

このイベントでは、ScalefastSecret Double OctopusDrishtiのプレゼンテーションも行われました。

 

  • シリーズBラウンドで2,200万ドルの資金を獲得したフランス発ロサンゼルス拠点のクロスボーダー企業Scalefastは、ブランドをグローバルに展開しながらビジネスの自動化・合理化を望む企業にDTC(Direct to Consumer)のソリューションを提供し、eコマースを簡素化します。ScalefastのCEOであるNicolas Stehle氏は会社のハイライトを語りました。Stehls氏は合わせて日本との取引開始についても触れました。
  • イスラエルと米国の企業であり、Forbesの「ベストサイバーセキュリティ企業20」に選ばれたSecret Double Octopus(SDO)は、United Technologies、3M、FairPriceなどの主要なグローバルブランドに安全なパスワードレスの多要素認証を提供しています。SDOは、信頼できるソリューションとして、Gartner2020ユーザー認証ガイドに3年連続で掲載されました。同社は最近の資金調達でソニーファイナンス、KDDI等から出資を受けています。BGVが初期に投資を行い、その後、日本企業に評価されたという事例の1つです。
  • NVIDIAにより「北米のトップAI企業」に選ばれたDrishtiは、今夏にシリーズBラウンドの資金調達も確保しており、Enterprise 4.0ソリューションの最も純粋な例と言えるかもしれません。Drishtiは製造工場にカメラを装備し、工場ライン上の労働者の動きを記録することで、メタデータとAIを活用して異常を特定し、製品の欠陥、非効率性、またはリコールの可能性のある原因を特定することができます。すでにデンソーとの協業を発表しています。DrishtiのCTO兼共同創業者であるKrishnendu Chaudhury氏とBGVのGPであるAnik Bose氏とのディープラーニングに関するディスカッションはこちらからご覧いただけます

 

会社のプレゼンテーションの後には質疑応答が行われ、日本の聴衆からは様々な質問が寄せられました。日本は世界最大のEnterprise 4.0市場の1つである一方で、重要なDXのソリューションの導入においては欧米に比べて3〜4年遅れています。したがってBGVのパートナーは、この巨大な市場への信頼できる窓口として、またBGVの投資先企業の具体的な橋渡し役として、日本のハイテク・コミュニティとの教育及びパートナーシップ開発を継続することが不可欠であると考えています。坂本氏(Mas Sakamoto)と松田氏(Ikkei Matsuda)は、これらの新進のパートナーシップを育むために地に足をつけ、KRPとのこのイベントの開催に尽力しました。

 

(備考)

BGVについて
BGVは今回主催者である合同会社SARRの松田一敬がJapan Advisory Partnerを務める、シリコンバレーやイスラエル、インド、フランスに拠点をもつシード・アーリーVCです。BGVは海外の優れた案件を発掘し、シリコンバレーのエコシステムに入れ込むことを得意とし、またB2Bに特化しています。BGVの創業者兼ゼネラルパートナーであるEric Benhamouは、インターネットの火付け役である3COM社をCEOとしてフォーチュン500企業まで育て上げたほか、スマートフォンの元祖である製品を生み出したパームコンピューティング社のCEOを務めた輝かしい経歴を持つ人物として知られています。シリコンバレー銀行や、サイバーセキュリティで著名なイスラエルのベングリオン大学のボードメンバーを務めるほか、クリントン元大統領に米国の情報技術政策のビジョンを策定する大統領情報技術諮問委員会(PITAC)のメンバーに任命されるなど産学官連携でも活躍しています。BGV強みとする領域は、AIやIoT、モビリティ、サイバーセキュリティ、スマートファクトリ―などのEnterprie4.0、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。

本セミナーのBGV Speaker
Eric Benhamou : ゼネラルパートナー&創業者
Eric Buatois : ゼネラルパートナー
HPのマネジメント、グローバルVCであるSofinovaの米国ヘッドを経てBGVのGP

※登壇企業

(1) Scalefast
D2C事業者を対象に、多機能で拡張性の高いeコマースソリューションを提供する米国発スタートアップ。同社のシステムの活用により、最短15日で、1秒当たり350個の注文、100種類以上の通貨・決算手段が利用可能なEC事業の立ち上げが可能となる。ロレアルやバンダイナムコ、ハスブロといった大企業も既存顧客。今年6月には、シリーズBラウンドで2200万米ドルを調達済み。現在、日本から欧米へのDTCサポートを展開中。

(2) Secret Double Octopus
企業のセキュリティ強化と従業員の生産性向上を目的に、シンプルでパスワードレスの多要素認証システムを提供する、イスラエル発スタートアップ。同社の提供する製品「Octopus Authenticator」はほぼ全ての主要なエンタープライズアプリケーションに連携でき、オンライン・オフラインの両方で動作が可能である。今年4月には、シリーズBラウンドでグローバル・ブレイン、ソニーFV、KDDI等から1500万米ドルを調達している。  日本語関連記事

(3) Drishti
行動認識技術とAIを活用して、製造業に関わる労働者の作業を科学的に分析・データ化することで、生産性や製品の質を向上し、トレーサビリティを強化するシステムを提供する、米国拠点のSRI(Stanford Research Institute)発スタートアップ。同システムは新型コロナウイルスの感染拡大対策として、工場内におけるソーシャルディスタンスの確保のためにも活用されている。既にデンソーが米国工場において導入。今年6月には、シリーズBラウンドで2500万米ドルを調達している。日本語紹介記事

セクション4では、セクション2で紹介するenterprise 4.0、covid-19の中でグローバルに活躍するスタートアップを紹介します。特にアーリーステージの案件、提携先を探している事業会社そして投資先を探しているCVC、VC等にとっては非常に魅力的な内容となっています。

本イベントはKRP OPEN INNOVATION CLUBの取組の一環として、無料で開催致しました。

 

 

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